HAVRMの空空活動誌

「空空」は「うつらうつら」と読むらしいです.まぁ常に寝不足なもんで...

CF-XZ6改造計画 その1 ~USB PDでの充電対応可 Vol. 1~

こんにちはHAVRMです.
以前からこのブログで書いているCF-XZ6の改造について記事にしていきたいと思います.現状すでにいくつか計画はありますが,どのくらい行うか未定です(そもそも記事を書けるかも不明です).
CF-XZ6の本体側については以前の修理記事に載せた画像からわかるようにほぼ隙間はありません.

havrm.hatenablog.com

わずかにある隙間も空気の流れのために必要であり,埋めるわけにはいきません(下のサイトに説明があります).

www.itmedia.co.jp

まあオプションパーツ(WANやリアカメラ)用のスペースはあるのでそこに組み込むこともできなくはないです(このスペースに何を入れれるかという話になりますが...).
一方でキーボードベース側はキーボードや様々なアダプターがついているもののサイズに対しすさまじく軽く,中には肩透かしを食らう程度しかないと書いているサイトもあります.

ikt-s.com

そこで基本はキーボードベースの機能向上に向けて改造を施していくことになります.また上記のブログで書いている通り,CF-XZ6は2台分落札しており,キーボードベースは全く同じものが2個ある状況というのも後押しになっています.


改造の1回目として最近多くのPCで採用されているUSB type-Cを用いた高速充電規格USB PDへの対応を進めていきたいと思います.「Vol. 1」とあるように今回で終わりにはならないです...


なお,このような改造はすべて自己責任で行ってください.

USB PDについて

そもそもUSB PDとは?

USB PD(Power Delivery)とは最近EUの方で「充電ケーブルをこれに統一しろ」とされたType-C(楕円のコネクタ)のケーブルを使う前提の最大20V 5Aの100Wまで(最近48V 5Aの240Wも仕様にできたらしい)給電可能な規格で充電元から充電先までケーブル含めたすべての機器が対応しないと使えないものです.特に100W等の大容量になると細いケーブルでは燃える可能性もあるのでこういった制限が必要になっています.普通のケーブルでは5V 3Aの15Wまでは対応していることが最近は多い(Raspberry Pi 3が出た当初(2016年)は電源に5V 2.5Aが推奨され,そんなのねーよとなっていたけど...あの時はまだmicro Bだった)のでUSB PD対応の充電器で非対応の充電ケーブルを使うと,この5V 3Aになるそうです.

USB PDの搭載のきっかけ

自身のスマホiPhone 7からiPhone 13 Proに更新した際に正規品のMag SafeとAnkerの60W級のUSB PD対応の充電器「PowerPort Atom PD 2」を購入しました.Mag Safeは最大15Wでの給電が可能ですが,手持ちのものでの最大がRaspberry Pi 3を買った当初に購入した5V 2.4A×2+5V 1A×2(全ポート最大5V 4.8A)の4ポートのものでMag Safeを生かしきれない,かつ今後USB PDが増えるから普通のモバイルPCのACアダプタとほぼ同等の60Wに対応しておきたいとPowerPortを購入しました.

ただCF-XZ6は16V 3Aの48WでUSB PDの規格内ですが古すぎてUSB PDに非対応で,メインで使うPCは240W級の電源が必要なのでUSB PDについての言及はなく,モバイルバッテリーも古いもののみで入力5V 2Aのものなので無用の長物になっていました.
友人にプレゼントとしてUSB PD対応の充電器とケーブル(友人の持っているPCはUSB PDに対応で,iPhoneiPadもUSB Type Cから充電可能)を購入した際に送料を無料にするため自分用に100WのUSB PDおよびThunderBolt 3(最大40GBpsの転送可能)対応のケーブルを買ったのがきっかけになります.

USB PD対応のケーブルをもっていなかったのでUSB PDへ改造するのも後回しにしていたのでいい機会だったのと,近々出張するため(なおこの記事は出張先で書いています)電源を持っていく量を減らしたかったのが重なり,USB PD化を行うこととしました.なお最新のLet's noteもUSB PDに対応しています.

USB PD対応への改造に向けた準備

CF-XZ6を充電するには...

CF-XZ6等のLet's noteの充電は16Vが基本です.なお通常は3A付近ですが,古いものや軽いものでは1Aのものもあるようです.そのため16Vを内部の充電ケーブルをハックして入れてあげれば充電できます.なおCF-XZ6では特にLet's noteでよくある充電器の正規品かの確認はないのでより簡単です.上記のブログで分解した際に電源ケーブルは赤黒の2本のケーブルが出ていただけなのでよりわかりやすいです(赤は+,黒は0Vが基本です).

USB PDから電力を取り出す方法

USB PDから電力を取り出す方法についてはコネクタ側に「eMarker」と呼ばれるUSB PDのどれに対応しているかを示す素子が必要です.この素子が充電器等と通信し,対応している電力を充電器側が判断します.USB PDから電力を取り出して使いたいという人は多い(と思う)ので,世の中にはトリガーデバイスという名前で「eMarker」内蔵の上,その電力だけを出してくれるデバイスが存在します.今回は100Wまでの全USB PD対応のトリガーデバイスを購入しました.表面のランドを適切にハンダすることで出力する電力(正しく言うと電圧)を設定します.

ただこのようなトリガーデバイスの特徴として,内部に変圧器があるわけではないのでUSB PDの電圧でのみ出力可能というのがあります.USB PDの規格では5V,9V,15V,20V(非公式で12Vもあるようです)なのでCF-XZ6の電源規格の16Vはないです.調べてみたところLet's note用のUSB PDトリガーケーブルも非公式で販売されていますが,15Vと記載があるので15Vでも大丈夫そうですが,16Vをちゃんと出すことも考慮すると20Vにも対応しているといいと思ったので全対応のトリガーデバイスを購入しました.

USB PD対応への改造作業

トリガーデバイスの性能を確認

買ったものの電源出力にノイズが激しくあると,当然PCを故障させる可能性があるので,まず電源の安定性を確認します.まず買ったデバイスを15V出力になるようはんだ付けをします.これについてはサイトの画像やデバイスの裏にパターンが書いてある(●が表から見たときにはんだする位置)のでそれを参考にします.

トリガーデバイス(左:表,右:裏)

今回は15Vなので一番出力側のみはんだ付けします.

トリガーデバイス はんだ後

少しハンダに失敗しました...


この状態でUSB PD充電器・ケーブルに接続し,オシロスコープで電源波形を見ました.使ったオシロスコープはTektronix TDS 3054B(2003年から販売開始)で友人から古いものをもらったものになります.
www.techeyesonline.com
データ出力はフロッピーディスク(!)でCSVでのデータ出力が可能です.幸いにも動作するフロッピーディスクドライブ(FDDOwltech FA404MX)とFDD-USB変換器(Amazonで購入しましたが今は売っていませんでした...ASIN:B07Y5WL4L3)を持っていたのでCSVでデータ出力しました.

電圧範囲は15.0597~15.3806Vで比較的きれいな電圧が出力されていました.

USB PD出力波形

また念のため出力側に16V(Let's noteの標準電源電圧)をかけても問題ないかを確認しています.出力端子に16Vを安定化電源より出力し,電流が流れてないことと,素子の発熱等がないことを確認しています(本来はダイオード等で遮断すべきですが...).

キーボードベースの分解

キーボードベースの分解は見えているねじをすべて外せば分解できます.とはいってもタッチパッド関連のところは外さなくて大丈夫です.実際に外すねじは次の箇所です.

キーボードベース ねじ箇所

ねじを外した後は特につめ等もないのでそのままふたを外せます.ただコツとして,バッテリー側から持ち上げるようにすると外しやすいです.

キーボードベース分解後

見ての通り中はスカスカです.特に今回内蔵するトリガーデバイスは超小型なのでなんの問題もないでしょう.
実際に外したねじは次のような感じです.キーボードベースの裏から見た順で並べています.

キーボードベースねじ一覧

スタンドの下とバッテリーの下,それ以外の3種類のねじを使っているようです.箇所によって長さが違うとかもなさそうなのであまり気にしなくても大丈夫でしょう.なお,ネジ山が写ってないのはiPhoneのノイズ処理?のせいです.

電源線へのUSB PDの結合

従来の専用充電器も使いつつ,USB PDも使いたいので今回は充電の電源線の途中からUSB PDへ分岐するように配線します.まずはキーボードベースの基板から電源線を抜きます.とくにロックとかはついてないので引っこ抜きます.

電源線

残念ながらこの電源線の基板側のコネクタについては知らないです...ただLet's noteの電源系はこのコネクタを使っているようです.
次にトリガーデバイスにケーブルを取り付けます.電源線はそれぞれ2つ穴がありますが,1つのみにつなげています.本来はケーブルの太さ等考慮しないと発熱・発火しかねないのですが,Let's noteの電源線と同程度の太さのケーブル(ちゃんとより線です)があったのでそれを使っています.

トリガーデバイスへのケーブルのはんだ付け

次に分岐できるように配線するのですが,元の電源線を切断したくはないので,途中の被覆のみ向いて分岐する方法を取りました.
まず切りたい範囲の被覆をカッター等で一周切ります.線形がわかっているならワイヤストリッパーを使えるのですが,詳細がわからなかったのでカッターで切りました.少し劣化した(切れ味の悪い)刃で押すようにすると被覆は切れて中の導線は切れないです(力加減の調整は必要ですが...).その後線の長手方向に被覆を切り1周切った箇所同士をつなげます.そのあとは被覆を剝くように開くとその部分だけ被覆を外せます.

被覆を剥く途中(この時は左側の切れ込みが足りてませんでした...)

その後は剝いたところにUSB PDの線を絡ませ,はんだ付けし,アセテートテープで巻けば終わりです(本来は熱収縮チューブ等使いたいですが,入れる方法がないのでテープにしています.)

分岐はんだ付け
電源線はんだ後

今回T字ではなく電源アダプターと同じ向きにつなげているのは配線の都合上こちらの方が有利だと考えたためです.

簡単な動作確認

とりあえずは配線が終わったので簡単に動作確認をします.PCの電源を入れる前に充電がちゃんとできるかで確認します.まず電源線を配線しなおし,電源アダプターをキーボードベースに固定しなおします.

電源線取り付け後

次にカバーを付ける前の状態でバッテリーを接続し,まず電源アダプターから充電できることを確認します.

バッテリーへの充電確認

ランプがついていることから充電できることが確認できました.厚紙を敷いているのは変な箇所で導通するのを防ぐためです.

PCを起動しての電源供給の確認

次に簡単に組み立てて,実際にPCを起動し,PCへの電源供給を確認します.組み立てないと基板むき出しのまま机に置くことになるので,組み立てる必要があります.
端子を出す穴はないのでケーブルごとUSB PD端子を外に出します.ねじを緩く締めて,ケーブルを切らない程度に組み立てます.また導通が怖いので全体をアセテートテープで巻いています.

テープで巻いた様子

実際に組み立てたのが次になります.

簡易組み立て後

その後実際にUSB PDをつなげた状態で電源を入れると電源ランプが点滅しました...
youtube.com
隣に出しているのは「Intel Power Gadget 3.6」でCPU等の情報を確認できるのですが,給電時と非給電時で「Package Freq0」が大きく変わるのがわかります.特に2in1のPCやタブレットのPCだとこれが顕著で給電しないとスペックが大幅に落ちるのはこれが原因です.
どうも負荷が高い状態だと15V 3Aでは不足するみたいで,起動時や重い処理をする際は給電できないようです.まぁ,とりあえず今回はほかに素子等用意していないのでどうしようもないのでシャットダウンすれば給電できるということで良しとしましょう(この解決をVol. 2で行う予定です).
なおこの後別に通常の電源アダプターを接続しきちんと使えることを確認しています.

PCに端子を取り付ける

このままではケーブルをフレームが挟んでしまうので使い物になりません.またPCから飛び出ているのも持ち運びに不便です.ということでPCに穴をあけて端子を固定しましょう.

PCに穴をあける

USB PDのコネクタはUSB Type Cなのでこの穴をあけます.すでにある穴は何らかの用途があり使えないのと,さらに言えばCF-XZ6のキーボードベースにおいてはUSB Type Cの穴はそもそもないです.
コネクタは基板のコネクタ側の端面をPCのフレームにつける感じにします.
穴をあけるのは以前買ったミニルーターを使いました.

もともとは3Dプリンター用に買ったのですが,PLAだと摩擦熱で材料が溶けてまともに研磨できませんでした...
このセットについてある丸鋸を使って大まかに切り取り,そのあとは同様に付属のダイヤモンドビット(サイトだと「ダイヤモドピッド」だけど...)で削り切ります.
まず取り付け位置を検討します.場所が開いているキーボードの上のスペースに置くことにします.

USB PDコネクタ取付位置

次にその箇所に印をつけます.また実際に加工するのは底面側のフレームなのでそちらに印をつけなおします.その後目算で少し小さめに削り取るエリアをマークします.

マーキングの様子(左から位置決め,印のつけなおし,削るエリアのマーク)

まずはこの引いた線の内側を丸鋸で切り取ります.引いた線に傷をつけないように丸鋸を当て,削れるところまで削った後,ペンチ等で折り取ります(縦はきれいに削れても横はどうしても残るため).

丸鋸での切削

そのあとは実際にコネクタを当ててきれいにはまるまでビットで削ります.丸鋸で切り取った範囲が狭すぎたので相当削ることになりました...

ビットでの切削後

切削後はいかにも金属的な感じでキラキラしているのでアセテートテープで導通対策をしておきます.

切削後アセテートテープで導通対策

これで実際にコネクタをさせることを確認します.

接続の確認
トリガーデバイスを固定する

もともとはねじで固定することを考えていたのですが,ねじ穴をあまりあけたくないのと,デバイスにねじ穴等ないので固定用の土台を作ることにします.
キーボードベースの中には固定用のねじ穴や強度用のリブ等あるのでこれをよけるように設計する必要があります.
実際に自分が周辺を実測した時は次のようになりました.

トリガーデバイス周辺の寸法(赤枠がトリガーデバイスの場所です)

この図はキーボード側のフレームになります.
ここに合わせてはまるような形の形状を設計し,3Dプリンタで製作します.

トリガーデバイス土台(3Dプリンタ製)

drive.google.com

実際にはめてみたらがっつり固定されたのでそのままトリガーデバイスを載せ,アセテートテープで固定しました.

トリガーデバイスの固定
実際に組み立てる

そのあとは底面のフレームを固定し完成です.

組み立て完了

少し斜めになっているのはトリガーデバイスの土台とトリガーデバイス上の自分ではんだした部分が干渉したためです.

まとめ

とりあえずUSB PDへの簡易的な対応は可能になりました.起動後しばらく待つとUSB PDでも給電しながらWord等の作業はできました.2日間程度の出張等ではUSB PD対応のモバイルバッテリーがあれば充電器なしで済むようになったのは大きな進歩です.ただ常に給電できないのはやはり不便なので20V 3Aを入力し,16Vに変圧して入力する回路を組み込もうと思います.これについてはVol. 2以降で書こうと思います.
なお今使っているモバイルバッテリーは次のものです.

このモバイルバッテリであれば安定して給電し続けることができます.ただあくまでバッテリーのため,結構早く充電が空になります...

追記(2024/02/11)

変圧する回路についてはまだ手を付けれていない状態です...
というのもこの記事を書いた後に買ったAnkerの100W充電器やUGREENの200W,300W充電器で問題なく給電できているためです.

どうも15V3A出力できたとしても余力がないと給電が安定しないようです.
そのため,ひとまず安定して給電できるようになったのでこの状態で使っています.最近キーボード側のバッテリーのLサイズがこの方法だと充電できなくなったので,16Vにする必要がないわけではないですが,それより先にPCが日常使いに耐えられなくなっている(仕事で使うようなWordやPowerPoint等が開けない,ブラウザでPDF等見ると画面がウィンドウが真っ黒になる等)ので,改造しないまま次のPCに買い替える可能性があります.ただ次に使うのにちょうどいいPCが見つからないんですよね...